ビットコインは2026年9月、月間では約6.4%上昇しました。それでも、月の途中には7万6,000ドルを下回る場面があり、9月21日に8万7,000ドル台まで上昇した後も、その水準にとどまったわけではありません。10月に入ると、米国の現物ビットコインETFでは日ごとの資金流入と流出が交錯しています。[1][2]
9月には米国の現物ビットコインETFへ資金が入り、下落を予想していた人の買い戻しも膨らみました。一方で、保有分を売る企業があり、米国では利上げも実施されています。買いを増やす動きと売却につながる事情が、同じ時期に存在していました。[2][5][7][12]
この記事では、9月から10月7日までのビットコインの値動きを、ETFへの資金流入、企業の売買、先物の清算、金利の変化に沿って説明します。半減期が価格に関わる仕組みと、日本で保有する場合の為替の影響も取り上げます。
1.9月は月間6.4%上昇。その途中には急落もあった
Yahoo Financeの米ドル建て日次データ(UTC区切り)では、8月31日の終値は約7万8,549ドル、9月30日は約8万3,554ドルでした。この2点を比べると、9月の上昇率は約6.37%です。UTCは協定世界時のことで、日本時間の午前0時で区切る日足とは、その日の最後の価格が異なる場合があります。[1]
9月15日の終値は約7万5,613ドルでした。その後、21日には日中高値で約8万7,364ドルまで上昇し、23日の終値は約8万4,383ドルに下がっています。9月は、中旬の下落から急反発し、再び押し戻される展開でした。[1]
前半に重荷となったと報じられたのは、米国の物価と金利をめぐる懸念です。9月10日に発表された8月の生産者物価指数は、企業が売るモノやサービスの価格を調べる指標で、最終需要の指数は前月比0.4%、前年同月比5.4%上昇しました。11日のCoinDeskは、利上げへの警戒とともにビットコインが7万7,000ドルを下回った状況を報じています。[3][4]
米連邦準備制度理事会(FRB)は16日、政策金利の誘導目標を0.25ポイント引き上げ、3.75〜4.00%としました。米東部時間午後2時の発表は、日本時間では17日午前3時です。[5]
利上げ決定後には、ビットコインがほかの主な資産より強い動きを見せた時間帯もありました。Coinbaseの9月18日付分析では、発表後に当初はこうした動きがあり、その後は資産ごとの動きが混在したと報告されています。[6]
21日の急反発では、下落を見込んでいた取引の解消が膨らんだとCoinDeskが報じています。[7] 値上がりによって売り持ちの損失が増え、その取引を閉じるための買い戻しが重なると、上昇に拍車がかかります。詳しい仕組みは第4節で説明します。
2.ETFに26億ドル入っても、売り手はいなくならない
米国の現物ビットコインETFは、証券口座を通じてビットコインの値動きに投資できる商品です。投資家自身が秘密鍵を管理しなくてもETFを保有できるため、暗号資産の取引所を使わない層にも投資の手段を広げました。
Farside Investorsの日次表を集計すると、9月の純流入は約26億4,770万ドルでした。純流入とは、入った資金から出た資金を差し引いても、入った分が多い状態を指します。21日は約9億9,900万ドル、22日は約7億1,470万ドルの純流入で、まとまった資金が入ったことが確認できます。[2]
9月21日・22日は純流入、10月7日は純流出でした。図は、それぞれの日の資金の出入りを差し引いた額です。
実際、9月23日はETFに約3億4,690万ドルが純流入しましたが、ビットコインのUTC日次終値は前日の約8万6,172ドルから約8万4,383ドルへ下がりました。Farsideの23日は米国ETFの取引日で、BTCのUTC日足は米東部時間の前日午後8時から当日午後8時までです。時間帯が一致しないため、この比較から「ETFに資金が入った後に下落した」という順序や因果関係は判断できません。同じ日付で純流入と終値の下落が記録された例として扱います。[1][2]
価格は、ETF以外の取引も含めて決まります。以前から保有する人が利益を確定したり、企業が資金を確保するために売ったりします。先物など、価格変動による損益をやり取りする取引では、上昇を見込んだ買い持ちを解消する際にも売りが出ます。こうした売りが重なれば、ETFに資金が入っている日にも価格は下がり得ます。
売買には必ず買い手と売り手がいます。ただ、すぐに売りたい注文が、現在の価格で買ってくれる注文を上回れば、より安い買い注文まで売却が進むことがあります。「買っている人がいる」と「今の価格を支えられるだけの買い注文がある」は、同じ意味ではありません。
ETFの純流入額は、対象商品の設定・解約に伴う資金の出入りを集計したものです。ETFを購入した人が、同時に別の市場でビットコインを売っている場合、その売却はこの集計に入りません。値下がりに備えて先物を売るなど、複数の取引を組み合わせている可能性もあるため、純流入額だけでは投資家全体の買い需要を測れません。
3.買い増す企業も、保有をやめる企業もある
企業のビットコイン購入も、ETFと並んで注目されます。Strategyは9月14〜20日に950 BTC、21〜27日に1,665 BTCを取得しました。一方、Sequansは9月24日、残る314 BTCを売却してビットコイン保有を終了したと発表しました。[11][12]
Strategyはこの2週間で合計2,615 BTCを買い増しましたが、Sequansは保有を終了しました。[11][12] 企業が保有するビットコインも、それぞれの資金需要や保有方針によって売買されます。
Strategyが公表した数量は、それぞれ数日間にわたる追加取得分です。発表日にまとめて購入した数量でも、同社が持つビットコインの全量でもありません。今回の開示からは、個々の買付時刻まで特定できないため、発表日の値動きへの影響は分かりません。[11]
取引所から外部のアドレスへビットコインが送られた場合は、保管場所の変更も考えられます。例えば、同じ所有者が取引所での保管をやめ、自分で管理するウォレットへ移すだけでも、取引所からの流出として記録されます。
Coinbaseの9月25日付分析も、取引所からの流出について、保管先の再編による移動の可能性を指摘しています。[10] 所有者が変わらなくても、管理するアドレスや保管場所が変われば、資金移動として観測されます。
4.下落を予想していた人の買い戻しが、急騰を大きくした
価格上昇には、将来の値上がりを期待する人の購入だけでなく、下落を見込んでいた人が取引を閉じる際の買いも関わります。
下落で利益を狙う取引をショート、売り持ちといいます。予想に反して価格が上がると損失が増えるため、取引を閉じる必要が生じます。その解消に伴う買い戻しが価格をさらに押し上げる現象が、ショートスクイーズです。9月21日の報道で注目されたのは、この売り持ちの清算でした。[7]
清算とは、取引を維持するための担保が足りなくなり、取引所などが保有中の取引を強制的に閉じることです。自己資金より大きな金額を動かすレバレッジ取引では、値動きに対して損益が大きくなるため、短時間でこの条件に達することがあります。
反対に、上昇を見込む買い持ちが多い局面では、価格下落が清算を招き、売りが重なる場合があります。最初の値動きが追加の取引を呼び、その追加の取引が値動きを大きくするわけです。BISも、暗号資産分野のレバレッジが下落を増幅し得る仕組みを論じています。[18]
売り持ちの買い戻しは、取引の解消が終わると一巡します。そのため、急騰の途中で発生した買いが、その後も同じ量で続くわけではありません。高くなった価格で売りたい人が増えれば、再び値下がりする可能性があります。
報道される清算額は、強制的に閉じられた先物などの取引額です。ビットコイン以外の銘柄を含む集計もあり、その金額が現物ビットコインの新規購入に使われたわけではありません。
5.利上げの有無より、発表前の予想から何が変わったか
金利が上がると、預金や国債など、利息の得られる資産を持つ選択肢が相対的に有力になります。借入資金を使う投資の負担も増えます。ビットコインを保有するだけでは利息は発生しないため、値動きの大きな資産を持つか、利息の得られる資産を選ぶかという判断にも影響します。
IMFが公表した2023年の研究論文は、米国の金融引き締めがリスクを取る意欲の低下を通じて暗号資産に影響する経路を分析しています。[17] 執筆者による研究であり、IMFの公式見解ではありません。また、過去のデータを使った分析なので、2026年9月の特定の日の下落原因を、その研究だけで確定することはできません。
投資家が利上げを予想していれば、発表を待たずに保有資産を減らすことがあります。予想どおりの利上げが決まったときには、売却が既に進んでいる場合もあるわけです。反対に、予想以上の利上げや、高い金利が長引くことを示す説明が出れば、投資家がさらに保有資産を減らす理由になります。
9月23日に公表された米国の総合PMI速報値は58.4で、前月の56.0から上昇しました。これは企業への調査から景況を測る指標です。[8] 同日の米10年国債利回りは5.11%で、前日の4.96%から上がっています。[9]
景気が強ければ、企業の売上や雇用の増加が期待できます。その一方、需要の強さから物価が下がりにくくなれば、FRBが高い金利を維持するとの見方も生まれます。暗号資産の投資家にとっては、景気のよさに加えて、借入負担や国債などの利回りも変化することになります。
9月23日は、ETFが純流入となる一方で、米10年国債利回りは上昇し、BTCの終値は下がりました。[1][2][9] どの要因がどれだけ価格を動かしたかは、これらの日次データでは算定できません。
6.物価の伸びと、雇用の弱さが同時に出ていた
9月30日に発表された8月の個人消費支出(PCE)価格指数は、家計が購入するモノやサービスの価格を測る指標です。総合は前月比0.3%、前年同月比3.4%上昇しました。食品とエネルギーを除くコアは、それぞれ0.2%と3.0%でした。[13]
7月のコアの前月比は0.1%だったので、8月の0.2%は前月より高い伸びでした。総合・コアのいずれも、前月から価格が上昇しています。[13]
一方、10月2日公表の9月雇用統計では、非農業部門の雇用者数は前月から2万9,000人増えました。前の2カ月の増加幅は合計6万人下方修正され、平均時給は前月比0.1%、前年同月比3.0%の上昇でした。[14]
雇用の増え方が弱くなると、FRBが景気への負担を考えて、追加の引き締めに慎重になる可能性があります。金利低下への期待は、暗号資産を買う理由の一つになります。一方、投資家が深刻な景気悪化を心配すれば、損失に備えて値動きの大きな資産を売る場合もあります。
この時期に発表された統計には、物価が前月から上がる一方で、雇用の増加は弱いという組み合わせが見られました。インフレを抑えるために金利を高く保つか、雇用への負担を和らげるか。金融政策には、その両方への対応が求められます。
7.10月7日の下落は、議事要旨が出る前に起きていた
10月7日午前0時(米東部夏時間、日本時間同日午後1時)のCoinDeskは、ホルムズ海峡でのタンカー攻撃と原油高を背景に、ビットコインが一時8万4,000ドルを下回った状況を報じました。同日午後0時27分の別の速報でも、8万4,000ドルを下回る水準が伝えられています。議事要旨の公表は午後2時(日本時間8日午前3時)なので、この下落は公表前に起きています。[15][16]
議事要旨は、政策金利を話し合うFOMCの会合で、どんな議論をしたかを後日伝える記録です。7日に公開されたのは、9月15〜16日の会合の記録で、9月30日のPCEや10月2日の雇用統計を受けて、その場で新しく決めた政策ではありません。[16]
戦争や紛争で原油供給や海上輸送が不安定になると、エネルギー価格の上昇を通じて、離れた国の企業や家計にも負担が及びます。
燃料や輸送の費用が上がり、その費用が商品価格へ転嫁されれば、インフレが長引く要因になります。投資家が高金利の長期化や景気への負担を予想し、保有する暗号資産を減らすことも考えられます。これは考えられる波及経路であり、10月7日の下落全体を原油高だけで説明できるという意味ではありません。
ETFにも変化がありました。Farsideの表では、10月1〜7日の5営業日を合計すると約1億6,330万ドルの純流出です。7日の約4億8,490万ドルの純流出が、この期間の合計を押し下げています。[2] これは取引日全体の集計であり、昼の時点の下落を引き起こした資金移動だったと、この日次データだけで判断することはできません。
9月は月間で約26億ドルの純流入だったのに対し、10月最初の5営業日は約1億6,000万ドルの純流出でした。ETFを通じた資金の動きも、9月末から同じ方向に続いていたわけではありません。[2]
8.半減期だけでは、次に上がる時期は決まらない
ビットコインの半減期は、取引をまとめたブロックが21万個追加されるごとに、新しく発行されるビットコインの報酬が半分になる仕組みです。おおむね4年ごとに訪れ、2024年4月には1ブロック当たり6.25 BTCから3.125 BTCに減りました。[19]
半減期で減るのは、採掘によって新しく発行されるBTCです。既に発行されたBTCは、その後も保有者が売買できます。市場に出てくる売りには、新規発行分に加えて、以前から保有されていた分も含まれます。
新しく発行される数量が減れば、採掘者が得る新規発行報酬も減ります。ただし、保有者による売却が増えたり、購入する資金が減ったりすれば、新規発行が減る時期にも価格は下がり得ます。
過去の半減期後の上昇を参考にする場合も、観測できる半減期はまだ4回です。毎回の金利環境、参加者、利用できる投資商品は異なります。似た値動きがあっても、「何カ月後に最高値を付ける」という期限を確定できるほどの繰り返しではありません。
今回の9月にはETFの資金流入とショート清算、10月初めにはETFの資金流出が確認されました。[2][7]
9.ドル建てで横ばいでも、円で見た資産額は変わる
日本からビットコインを見る場合には、米ドル建て価格と円換算額の違いもあります。
仮に1 BTCが8万ドルで変わらず、ドル円だけが1ドル150円から145円になったとします。単純に掛け算すると、円換算額は1,200万円から1,160万円へ下がります。ビットコインのドル価格が動かなくても、円高によって40万円の差が生じる計算です。
これは為替換算だけを示す仮定の例です。実際の観測価格ではなく、手数料や国内取引所との価格差も含めていません。
ここでいう円換算の変化と、米国金利の変化がビットコインのドル価格に及ぼす影響は、別の話です。前者は同じ8万ドルを何円として評価するかという計算で、後者は投資家の資金配分や売買を通じて8万ドルという価格自体が動く話です。
このため、ドル建てのBTC価格が横ばいでも、円高が進めば円建ての評価額は下がります。国内アプリで見る円建て価格には、ビットコイン自体の値動きと、ドル円の変化の両方が関わります。
10.9月の反発を支えた買いは、10月まで続いたのか
9月の回復を、21Sharesは10月6日の見通しで現物需要主導と評価しました。Coinbaseの9月25日の分析は、ETFへの資金流入が戻る一方で、利益を確定する売りもあったと報告しています。[20][10] どちらも買いの回復を取り上げていますが、後者はその裏で続く売却にも注目した分析です。
数字をたどると、9月にはETFへ月間約26億ドルが純流入し、21日の急騰では売り持ちの買い戻しも膨らんでいました。一方、10月最初の5営業日はETFが純流出に転じ、7日には原油高とともにBTCの下落が報じられました。[2][7][15]
ETFへの継続的な資金流入と、損失を抑えるための買い戻しでは、買いが続く事情が異なります。前者はその後も資金が入るかどうかに左右され、後者は売り持ちの解消が済めば一巡します。9月の急反発の勢いが、そのまま10月にも続くとは言えない理由です。
2026年秋の値動きには、こうした売買の変化と、金利・物価・雇用への見通しが重なっていました。半減期の周期や一つのニュースだけで、次の高値や下落の時期を決めることはできません。
本記事は2026年10月8日時点で確認した情報に基づく学習用の解説です。数値は集計方法や更新によって修正される場合があります。個別の売買を勧めるものではありません。
出典・関連資料
[1] Yahoo Finance「Bitcoin USD(BTC-USD)過去データ」
https://finance.yahoo.com/quote/BTC-USD/history/
日次価格の再確認:Yahoo Finance公開データ(UTC日次)
本文の価格はUTC区切りの日次系列を使用。月末価格はCoinMarketCapの履歴とも照合。
https://coinmarketcap.com/historical/20260831/
https://coinmarketcap.com/historical/20260930/
[2] Farside Investors「Bitcoin ETF Flow」および全期間表
https://farside.co.uk/bitcoin-etf-flow-all-data/
[3] BLS「Producer Price Indexes — August 2026」
https://www.bls.gov/news.release/archives/ppi_09102026.htm
[4] CoinDesk、2026年9月11日の相場報道
[5] Federal Reserve、2026年9月16日FOMC声明
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20260916a.htm
[6] Coinbase Institutional「Weekly Market Commentary」2026年9月18日
[7] CoinDesk、2026年9月21日のショートスクイーズ報道
[8] S&P Global、米国9月PMI速報
[9] U.S. Treasury「Daily Treasury Par Yield Curve Rates」2026年
[10] Coinbase Institutional「Weekly Market Commentary」2026年9月25日
[11] Strategy、SEC提出資料:9月14〜20日の950 BTC取得、9月21〜27日の1,665 BTC取得
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1050446/000119312526396093/mstr-20260914.htm
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1050446/000119312526403417/mstr-20260914.htm
[12] Sequans、SEC提出資料:9月24日付の残存314 BTC売却完了の発表
https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1383395/000138339526000110/septemberbitcointreasuryex.htm
[13] BEA「Personal Income and Outlays, August 2026」
https://www.bea.gov/news/2026/personal-income-and-outlays-august-2026
[14] BLS「Employment Situation, September 2026」
https://www.bls.gov/news.release/archives/empsit_10022026.htm
[15] CoinDesk、2026年10月7日、原油とビットコインの相場報道
https://www.coindesk.com/markets/2026/10/07/bitcoin-dips-below-usd84-000-as-oil-jumps-on-iranian-tanker-attacks
https://www.coindesk.com/business/2026/10/07/live-updates-bitcoin-slides-under-usd84-000-as-usd550-million-in-bets-get-liquidated
[16] Federal Reserve「Minutes of the September 15–16, 2026 FOMC Meeting」
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20260916.pdf
[17] IMF Working Paper「The Crypto Cycle and US Monetary Policy」(2023、執筆者の研究でありIMFの公式見解ではない)
[18] BIS「DeFi risks and the decentralisation illusion」(2021)
https://www.bis.org/publications/defi-risks-and-decentralisation-illusion
[19] iShares「What is the bitcoin halving?」
https://www.ishares.com/us/insights/what-is-the-bitcoin-halving
[20] 21Shares「Bitcoin Outlook, October 2026」
https://www.21shares.com/it-ch/insights/bitcoin-outlook-october-2026
