米国ではビットコインの現物を保有する上場投資商品(ETP)が取引され、Visaは一部の金融機関向けにUSDCでの精算を始めました。資産のトークン化では、計画の発表に加え、実際の取引も始まっています。ただし、ETPを買う投資家、USDCで精算する金融機関、トークン化された資産の保有者は同じではありません。何がすでに利用でき、何が計画段階なのかを、具体的な発表に沿って見ていきます。
ビットコインETPでできること
米SECは2024年1月、ビットコインの現物を保有する上場投資商品(ETP)の上場・取引を承認しました。投資家は証券口座でETPの持分を売買できます。日本では「現物ビットコインETF」と呼ばれることもありますが、SECはETPという名称を使っています。
2025年7月、SECはビットコインやイーサリアムのETPについて、指定参加者が持分を設定・償還する際に、現金ではなく暗号資産の現物を受け渡す方式を認めました。これはETPの運営に関わる事業者の手続きです。ETPを買った投資家がビットコインを直接受け取れるようになったわけではありません。
ETPの持分を持つことと、ビットコインを自分のウォレットで管理することは異なります。ETPからビットコインを送金したり、アプリで使ったりはできません。またSECは2024年の承認時、対象商品を認めたのであって、ビットコインそのものを推奨するものではないと説明しています。
USDCの精算と、トークン化された資産
Visaが2025年12月に始めたのは、米国の一部金融機関がVisaへの精算にUSDCを使う仕組みです。カード利用者はこれまでどおり店頭でカードを使います。利用者がレジでUSDCを送るサービスが始まったわけではありません。
対象は参加する金融機関です。一般の利用者がUSDCを現金に戻す条件や、日本で同じサービスを使えるかどうかは、この発表だけでは分かりません。
資産のトークン化にも、保有者の権利という別の問題があります。米SECが2026年1月に公表した職員声明によると、発行体が自ら作るトークンと、第三者が作るトークンでは、保有者が請求できる権利が異なる場合があります。この声明は新しい規則ではありません。どのような権利を持つかは、それぞれの商品資料で確認する必要があります。
DTCCは2025年12月にDTC保管資産のトークン化サービスを公表し、2026年7月15日には30社超が参加する本番環境での取引を実施しました。DTCCが公表しているサービス開始予定は2026年10月です。利用対象はDTC参加者とその顧客で、一般投資家向けの直接提供を示すものではありません。
この三つの動きは、使う人も、扱うものも異なります。ビットコインETPは証券口座で売買する商品、VisaのUSDC精算は参加金融機関の手続き、資産のトークン化は商品ごとに保有者の権利が変わり得る仕組みです。発表を読むときは、利用者と開始時期をまず確かめてください。
出典・関連資料
・米SEC、現物ビットコインETP承認時の声明(2024年1月10日)
https://www.sec.gov/newsroom/speeches-statements/gensler-statement-spot-bitcoin-011023
・米SEC、暗号資産ETPの現物による設定・償還(2025年7月29日)
・Visa、米国の一部金融機関によるUSDC精算(2025年12月16日)
・金融庁、電子決済手段等取引業
https://www.fsa.go.jp/common/shinsei/dendai/dentori.html
・米SEC職員声明、トークン化証券(2026年1月28日)
・DTCC、トークン化サービス計画(2025年12月11日)
https://www.dtcc.com/press-releases/2025/paving-the-way-to-tokenized-dtc-custodied-assets
・DTCC、本番環境での取引とサービス開始予定(2026年7月15日)
https://www.dtcc.com/press-releases/2026/dtcc-turns-tokenization-into-reality
補足
ETFは米国のETP制度の話であり、日本の販売・税制・利用資格とは別です。DTCCの2026年10月のサービス開始時期は、2026年7月15日の発表時点の予定です。投資判断では商品の開示書類と所在国の規制を確認してください。
